2014.07.12 狂信的スバリスト レヴォーグに乗る D

FB16 直噴ターボエンジン のドライバビリティ、フレキシビリティは、すべての領域で、FB25 を凌いでいる。

 低速から高速まで非常にトルクフルで、水平対向エンジン らしい、シャープでスムースネスな加速が可能だ。

 もうこれなら、FB25 はいらない。グローバルの アウトバック もこれ一本でいけてしまうのではないだろうか?

lEVORG DRIVING EXPERIENCE 福岡(9)

これからの スバル ボクサー スポーツ を背負って立つ FA20型直噴ターボエンジン 、あとは ハイブリッド、プラグインハイブリッド があれば、メカニカル パッケージの優位性と併せて、グローバルマーケット で十分戦っていけると思う。

 さらに今回の FB16型 直噴ターボエンジン が 素晴らしい のは、これだけの性能を レギュラーガソリン で実現してしまったということだ。

 どんなエンジンだって、ハイオクで燃焼改善するのは簡単だ。なにしろ スバル は、2.0L で 300ps、400N・m という 世界的に見ても圧倒的なハイパフォーマンスを誇る スポーツ ボクサー を ふたつ も持っている。

 だが、オクタン価が低い日本の レギュラーガソリン でこの性能を実現することは、非常に難しい技術的困難が伴ったに違いない。

 燃焼が不安定、かつ 火炎伝搬 が 不均一 になりやすい レギュラーガソリン で、このアーキテクチャーを実現するためには、吸気・圧縮・爆発・排気 という 4ストローク エンジンの一連の運動サイクルのすべての局面で、常に緻密で正確なコントロールが求められる。

 当然、そこで行われた 「技術的検証」 の 数 と、それに費やされたであろう 時間 は、今回、FB16型直噴ターボエンジン の開発について、富士重工業 技術陣 がさらりと語ってのける言葉とは対照的に、はるかに我々の想像を絶する、壮絶で膨大なものだったはずだ。

 かつて WRC で、リストラクター による吸気制限が行われるレギュレーションで、EJ型水平対向エンジン の ビッグボア で 真正面から 燃焼改善 に取り組み、7,000rpm 以下という低いレブリミットで、2.0L という 排気量 から、ほとんど 1000N・m という 驚愕の最大トルクを生み出していた 「技術的蓄積」 が見事に 花開いた。

 技術 とは 一朝一夕 に 完成 するものではない。

 永年 EJ型エンジンの成長を見守ってきた スバリスト なら、感慨もひとしおである。

 ちなみに、ヨーロッパで売られている レギュラーガソリン は 95RON(リサーチ オクタン 価) 以上で、これはほぼ 日本国内で売られている ハイオクガソリン に相当する。だから、ヨーロッパメーカー が作っている ダウンサイジングエンジン は、この FB16直噴ターボエンジン の開発に伴った 「技術的困難」 とは比較にならないほど 「ヌルい」 。

 彼らが日本市場向けだけに、新たにレギュラーガソリン仕様 を開発する可能性は、企業としての コスト - ベネフィット を考えればほぼ「0%」 だ。富士重工業 が レヴォーグ を 「日本のユーザーのためだけに開発した」 という 「看板」 は伊達ではないのだ。現在、富士重工業 が持てるエンジン技術のすべてが、この FB16型直噴ターボエンジン に注ぎ込まれている。

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EyeSight Ver.3 の ACC (アダプティブ クルーズ コントロール : 全車速追従機能付クルーズコントロール ) は、相変わらずその動作と信頼性で他に並ぶものがない。

 「ステレオカメラは安いけど、霧や夜間には弱い」という人間がいる。

 ホントか? 家電量販店で買える ビデオカメラ とは訳が違うぜ(笑)。何にしろ、専用開発すればコストが嵩むのは当然だろう。

1年半 EyeSight Ver.2 を使ってみて、さすがにまだ プリクラッシュ ブレーキ のお世話になったことはないが、クルマ という乗り物が、基本的に 有視界 での使用を前提としたものである以上、リアルタイムでの状況判断はステレオカメラ方式に圧倒的な 「伸び代」があると私は思う。

 こうした 予防安全システム の制御 には、膨大な 技術的蓄積 と リアルワールド における 実証実験 の積み重ねが必要だ。それをやらずに「ポッと出し」で発売するメーカーが相次いだ。

 プリクラッシュブレーキが付いたあるクルマで、一定以上の速度では止まらず、フェンスに突っ込んで大ケガしてしまった、というニュースを聞いた。「クルマ には異常がない」、「システム を過信してはいけません」などと、メーカー としてはいろいろ 「言い訳」 はできるだろう。そもそも クルマ を 運転する、という行為によって起こるすべての 「責任」 はドライバーに帰すべきものだから。

 だが、「ない」 と分かっていたら起こりえなかった事故だ。メーカーにしても、こんなことが起こり得る可能性はシステムの性能を考えれば最初から予測できたはずだ。だったら、どうしてそんな 「不完全なもの」 を改良の手を加えることなく世に出したのか? そのメーカーの 「モノ造り」 というものに対する考え方の 「底の浅さ」 が透けて見えるのである。

 しつこいが、技術とは 一朝一夕 で 完成するものではない。EyeSight の歩んできた 25年 という歳月を思う時、ひとつの技術を守り育て、モノにするためには、その技術が目指すべき方向性についての明確なビジョンと、日々の小さな進歩を疎かにせず地道に積み重ねる、頑な信念がなければならないと痛感させられる。

 自動車によって悲嘆に暮れる人々を生み出してはならない。

 今回、EyeSight Ver.3 では、ステレオカメラ が カラー化 されている。これによって、前車のストップランプが認識可能になり、従来、80m先までだった 前方捕捉距離 が 120m まで伸びている。だからより緻密かつスムーズな前車追従、プリクラッシュ ブレーキ のコントロールが可能になっている。

 併せて、前方視野角 の 40% 広角化、そして 「極め付き」 が、アクティブ キープ レーン(車線逸脱防止機能) が追加されている。

 これは、65q/h 以上で、ステアリングに手を添えてないと、約10秒 で解除されてしまうから、ずぼらな運転を奨励するものではない。そういう クルマ がお望みなら、他のメーカーに行けばいい。

 その作動は、大きく車線を外れると警報音とともに ギューッ と車線中央内に引き戻されるが、轍などで少し直進から進路がズレたなぁ、と感じた時にも 「見えざる手」 が ごく自然に ゆっくりと 車線の中央へトレースしてくれる。

 その制御の緻密さと自然さは、ACC の完成度と併せて、確実に 世界一 である。


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